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ATTAC京都労働問題部会
総括及び方針(案)


(最終更新:04/08/29)
ATTAC京都労働問題部会 総括及び方針(案)
文責 小森政孝

[03年度総括]
(i)活動報告
 ATTAC京都グループ労働問題部会では03年度(03/07/19-04/08/23)、以下の企画について主催または実行委員会に参加した。
 ・04/01/10若者の雇用問題を考えるシンポジウム
 ・04/04/20「フリーター417万人の衝撃」上映会+学習会
 ・04/05/24・31「人らしく」労働問題市民講座
 ・04/06/10生活破壊と戦争を許さない!人らしく生きるために6・10集会
 また、以下のような企画に参加し、現在の労働現場が抱える問題についての理解を深め、労働運動の担い手たちとの交流を深めた。
 ・04/05/01 第14回 京都地域メーデー(04春期行動ネットワーク京都)
 ・04/05/22「人らしく生きるために partU」上映会(闘う国労闘争団を支援する京都の会)
 ・04/06/06非正規労働者のための全国セミナー(全国一般全国協)
 ・04/07/24・25長居大輪まつり(長居大輪まつり実行委員会)
 このほか、京都総評、武庫川ユニオン、きょうとユニオン、ゼネラルユニオンなど労働運動の前線にたつ人々にメンバーが会いに行き、活動内容、これまでの歴史、直面する課題などをお聞きした。また、きょうと夜回りの会による定例の夜回りにメンバーがそれぞれ何度か参加した。

(ii)評価
 情勢分析の項(末尾に掲載)を一読して分かるように、労働における諸問題の多くが社会に存在する問題のその他の問題と関連して生じていることがわかる。これは、資本主義社会に生活する人類のほとんどが雇用を得ることで生活していることからくる必然の帰結ともいえる。労働運動は、雇用を取り巻く問題が社会のすみずみにまで影響を及ぼしている資本主義社会の中において、そのような社会の基礎をなす関係を俎上にあげるという、自らの社会的役割を自覚するところから発している。それゆえ、歴史的にみて労働組合は社会全体のありかたを常に問題とし、平和の問題をはじめとして積極的に社会運動の担い手となってきた。
 しかし、現在の日本の市民社会において労働組合の評価は高いとはいえないのではないかという危惧を抱く。労働組合の組織原理や文化に「旧さ」をかんじる市民運動の活動家は少なくない。このことは、ヨーロッパや南米、韓国などと比較するとかなり奇異なことである。これらの地域では、労働運動は、連携して大きなうねりとなっていく社会運動全体の中で主導的な役割をはたしている。
 さて、ATTAC京都労働問題部会では、部会それ自体が当事者組織である労働組合というわけではないため、労働運動において果たすことのできる役割は間接的なものとならざるを得ない。しかし、運動間の交流を促進することで新自由主義に対抗する空間を拡大するというATTACの目的に照らして、こうした状況を変化させることはまさにその役割とするところであろう。すなわち、労働運動とその他の社会運動との、あるいは労働運動相互の繋がりを触媒することが必要だという問題意識が労働部会の基礎である。前記したように、本来的に労働運動は社会的性格をもつものであり、また持つべきものであるという認識にたつ。

 こうした問題設定にたって、昨年度の取り組みを振り返ると、以下のことが評価できる。
 @ 部会としてナショナル・センターの枠組みを越えて交流し、一定の関係を築くことができた。
 A 従来、労働運動のみで構成されていた実行委員会に市民セクターとして参加し、市民運動と労働運動の関係をつくっていくための基点を作った。
 もちろんこれらはATTACのみの活動の結果というわけではなく、労働運動にたずさわる人々が反戦平和の取り組みなどを通じて築いてきた相互の信頼関係が基礎となっており、労働部会はそこに加えていただいたというに過ぎない。とはいえ、従来のそれとは質的にことなる交流の回路を開いたという点で、果たしている役割は決して小さいものではないと思う。

 課題としては、
 @ 異なるナショナル・センターをもつ労働運動間の下からの交流を拡大すること
 A 現在関係を作れていない移住労働者の支援運動や、均等待遇をめざす取り組みとの接点をつくっていくこと
 B 現場の運動そのものへの市民社会の支援が増加するよう働きかけること
 などが挙げられる。社会運動としての労働運動と、そのほかの運動とが、相互に利益になるような関係を構築するための努力がさらに必要である。
 
[04年度方針]
 前年度の反省にたち、今年度の方向性を考える時、その基礎となる要素は次の2つである  
 (i) 労働運動との直接のかかわりをふやす。
 (ii) 労働運動とその他との社会運動との交流を触媒する
 具体的には、
 (i)’-1 地域青年ユニオン作りの動きを支援する。年金問題をはじめ社会保障制度の後退、高い失業率・非正規率など、若年層をとりまく問題にかんする問題意識の普及に努める。
    -2 地域の労働運動のネットワークに積極的に参加し、争議支援、労働基準局交渉、最低賃金や均等待遇などのキャンペーンに関わっていくことにより、運動をひろげ、信頼関係を醸成する。
 (ii)’-1 上記の取り組みを、ひろく市民運動世界に伝え、協力を要請する。
    -2 KSFという場を積極的に活用し、枠組み横断的、分野横断的な交流をコーディネートする。

 上記の取り組みを通じて、労働分野でのネットワーク作りにおける重要なアクターとしてATTAC運動を広げる。

 以上、方針とします。


付  [情勢分析]
・雇用なき景気回復という言葉に表現されているように、企業の業績回復とはうらはらに失業率は依然として高い。多国籍企業として展開する一部の大企業の収益は過去最高に達する一方で、中小企業には厳しい状況が続いている。
・労働者のなかの所得の2極分解が進行し、年収1000万円をこえる層が微増し、年収200万円を切る層が急速に増大した。失業者の年齢構成に注目すると、若年層が突出して高く、中高年がこれに続く。企業は正規職の新規採用を抑え、非正規雇用(パート・派遣)をもってこれにかえている。
・女性の労働者の半数以上が非正規雇用であり、またここ数ヶ月の失業率の微減は女性の就職活動の断念に起因していると言われる。
・80年代の国鉄の分割・民営化をその端緒とする公共サービスの私営化が進行している。NTTの大規模なリストラ、郵政の公社化により、公共サービスに携わる労働者の非正規化をふくむ労働条件の悪化、、労働密度の極端な上昇が問題となっている。また、これらの再編に伴い、労働組合つぶしが行なわれてきている。
・労働法制・労働行政に目を向けると、派遣法の対象業種拡大により身分の不安定な派遣労働者が増大した。また労働基準局が個別の労働紛争の解決に力を発揮しないことが問題となっている。リストラを巡る裁判では経営者よりの司法判断が増加している。
・移住労働者の問題では、90年代初頭から流入労働力が顕著に増加してきたが、不況により鈍化している。これにともない入管当局による「不法労働者」摘発が強化され、もともと構造的に「違法」状態に追いやられることで低廉な労働力として使用されてきた移住労働者の生活が不安定化している。
・国際的なレベルに目を向ければ、WTOやFTAにより、企業活動にたいする規制が低位平準化されることが予想され、労働条件、職場の安全確保が危機に曝されている。また、途上国の輸出加工区などに進出した多国籍企業による現地労働者の過酷な使役が問題になっており、日系企業に起因する紛争も発生している。
・こうした諸問題は、経済のグローバリゼーションの進行により、多国籍企業・金融資本をその主役とする世界規模の競争に日本企業が勝ち残ることを目的として、進められてきた新自由主義政策の結果である。
・それは「新時代の日本型経営」(日経連、1995)にみられるような、ほとんどの労働者を非正規雇用にしてしまおうという経済界に主導された方向性のもとに進められてきた。
・そして同時に、日本社会に内在する身分制的な観念や女性差別、他民族への蔑視がこれらを動因として表現されたものである。
・こうした状況下で、日本の労働運動は80年代末の総評の解体と連合の成立、組織率の低下により、その主要な部分は、労働者をまもれない状態に陥っている。労働組合に入ることに魅力を感じない人々が増加し、ついに組織率は20%を切るにいたった。
・一方で、地域レベルの職場を越えた労働組合としてのユニオン運動の登場、非正規雇用労働者を組織する労働組合の増加、外国人のための労働組合の出現など、あたらしい取り組みが次第にそのプレゼンスを増してきている。日系企業の海外での労使紛争に際し、国内の本社に国内労働者の組合が抗議するといった、国境をこえた運動の連携も取り組まれ始めている。

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